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私の近年の作品には「チャート」と呼ばれるグラフが描かれている。 これは主に外国為替相場を表す際に用いられる。このチャートは一本一本がロウソクのような形をしており、これらの形は「ロウソク足」と呼ばれる。このロウ ソク足の長さによって、価格の変動の大きさや時間を視覚的に明確に知ることができ、市場の動向を素早く知ることができる。 インターネットを通じて誰でも、為替相場のリアルタイムの情報を得ることができ、このチャートは土日を除けば、毎分断続的に記録され続けている。

私はこの チャートの動向を毎日のように観察している。

私がこれを観察するようになったのは、今から一年前のことである。 2011年3月、私は東京で、後に世界を注目させた、東北大震災を経験した。津波や原発事故による被害は凄まじく、世界中の人々に恐怖を与えた。

この時、 米ドルと円の為替相場においても、歴史的な事件が起きた。この災害による混乱で、米ドルと円の相場はたった一日で7円も相場が下落したのだ。(この通貨ペ アは最も価格変動が少ないと知られているにもかかわらず。)この背景には日本の保険会社による大規模な円買いがあったと言われている。 その時のチャートは、まるで地面が切り裂かれたかのような、大きな谷の形を描き、私の目を釘付けにした。

この事件を通して、私は為替相場に興味を持ち、為替の相場変動と人々の混乱との因果関係を調べた。そうすると大変興味深いことに、為替の相場が大きく動く 背景には、経済・政治・宗教または戦争などが深く関与していることがわかった。つまり、このチャートは必ず何らかの社会的要因によって動かされている。私 はこの事実を知った時に大変衝撃を覚えると同時に、このグラフを絵画として記録することによって、人類の歴史を克明に残すことできると考えた。

 

2012年12月
築山 弘毅